説教

2016年2月7日

ペトロの赦し
大坪章美


マルコによる福音書 16 章 1-8 節



ペトロは、弟子の中で、初めてイエス様の事を、「あなたはメシアです」と告白した人物です。イエス様は、このペトロの信仰告白を節目として、弟子達に、ご自分が受けなければならない、苦難と、死と、復活について語り始められました。それは、「メシアが苦難を受けて、死んでしまう」と言うものです。ペトロは、あまりの喜びと、失望の激しさに自分を抑えきれず、「イエス様をわきへお連れして、諌め始めた」のでした。

この時ペトロは、イエス様から、「サタン、引き下がれ、あなたは神の事を思わず人間の事を思っている」と、ひどく叱られました。イエス様を敬い、心から愛していたペトロでしたが、エルサレムに入城して、主の晩餐も終えた頃から、次第に自分の思いと行動が何かしら噛み合わなくなっている事に気付き始めました。

イエス様は、最後の晩餐の後、弟子たちを連れてオリーブ山へ向かう途中の道で、弟子たちに「あなた方は、皆、わたしにつまずく」と仰いました。このイエス様のお言葉も、ペトロにとっては心外なことでした。ペトロは即座に、「たとえ、みんながつまずいても、わたしだけは、つまずきません。」と答えましたが、イエス様からは、「あなたは、今夜、鶏が二度鳴く前に、三度わたしを否むだろう」と宣告されてしまうのです。

その後のゲツセマネの園でも、ペトロは、昼間の疲れで、つい眠り込んでしまい、イエス様から、「シモン、眠っているのか、わずか一時も、目を覚ましていられなかったのか。」と言われました。そして、遂にゲツセマネの園に、イエス様を逮捕する為の一団が、裏切り者のユダを先頭にして、やってきた時、ペトロは、目の前でイエス様が捕らえられるのを見ると、怖くなって、イエス様を見捨てて、逃げてしまったのです。

次にペトロが姿を現したのは大祭司カヤパの屋敷の中庭でした。赤く燃える焚き火の炎から顔を隠すようにして、辺りを窺っていたところ、女中の一人から見破られてしまうのです、「あなたも、あのナザレのイエスと一緒にいた」と指さされました。また、居合わせた男たちも、「確かにお前は、あの連中の仲間だ。ガリラヤの者だから」と言い始めました。ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら、「あなた方の言っている、そんな人は知らない」と否定しましたが、たちまち、ペトロの耳には、二度目の鶏の鳴き声が聞こえてきました。

翌朝、イエス様が十字架に着けられて、もう昼の3時頃でした。イエス様は、大声を出して息を引き取られました。そしてこの時、ペトロを含む他の男達は、イエス様を取り巻く状況の急展開に恐れをなして、隠れ家に潜んでいたのです。「もう、破滅だ」と思いました。ペトロは、「自分の本心ではない」、とは言いながらも、自分の手でイエス様を裏切ってしまった、見捨ててしまった、のですから。私は、“神の子を裏切った”、という大罪を背負いながら、生きてゆかなければならないのだろうか。ペトロは激しく自分を責めました。

「婦人達3人はイエスのご遺体に油を塗るために、日が出ると直ぐに、墓に行った」と記されております。そこでこの婦人達は、空っぽの墓の中で、白く長い衣を着た若者から、「さあ行って、弟子達と、ペトロに告げなさい。『あの方は、あなた方より先に、ガリラヤへ行かれる』」と告げられました。やがてこの話は、ペトロと10人の弟子達に伝えられました。

 この婦人たちが伝えた話に、耳を疑うほどに喜んだのが、ペトロでした。ペトロは、婦人たちに、何度も何度も聞き返したことでしょう、「御使いは、本当に、『弟子たちと、ペトロに告げなさい』と言ったのか?」。ペトロにだけは、イエス様の御心がわかったのです。ペトロは何度も呟きました。「イエス様は、わたしを赦して下さったのだ。私にだけは、名前を呼んで知らせて下さったのだ。」ペトロの心は闇から解放されました。

更にヨハネ福音書21:15以下には、復活のイエス様が現れて、ペトロに、「あなたはこの人達以上に、わたしを愛しているか」と、三度問われた事が記されています。ペトロの三度の否定をお赦しになるためでした。イエス様は、私達の解決できない問題も、御心に留めて下さいます。



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