説教

2011年4月10日

恐れずに信じなさい
大坪章美


ルカによる福音書 8章49-56節


イエスさまが、ガリラヤでの伝道を始められてから、しばらく経ったころのことです。ある日、イエスさまは、ペトロの舟でカファルナウムヘ戻ってこられました。福音書記者ルカは、「群衆が喜んで迎えた」と記しております。

そのようなイエスさまのもとへ、この町の会堂長で、ヤイロという人が来て、イエスさまの足元にひれ伏し、自分の家に来て下さるように、お願いをしました。何故なら、彼の一人娘が死にかけていたからでした。そして、イエスさまと会堂長ヤイロが、死にかけた一人娘が寝ているヤイロの家に向かって歩き出した、その途中、イエスさまたち一行の周りには大勢の群衆が押し寄せてきました。

そして、その中に、もう12年間も出血が止まらず、治療の為に全財産を使い果たしたが、なお癒やされない女性がおりました。彼女は、群衆に押し出されるように、群の最前列に出ると、目の前に見えたイエスさまの衣の房に、そっと触れたのです。すると、彼女の出血は即座に止まってしまったのでした。イエスさまは振り向いて、「ゎたしに触ったのは誰か?」と問ゎれました。癒やされた女性は、一瞬迷いました。名乗り出ることへの恐怖が、彼女の心をよぎったのです。何故なら、彼女は、二重の律法違反をしていたからでした。出血が止まらない時は、彼女が触れた物も人も、皆、汚れる、とレビ記15章25節には記されています。しかし、彼女は思い直し、イエスさまの前に身を投げ出し、ひれ伏して、ことの次第をイエスさまに話したのでした。全てをイエスさまに委ねたのです。イエスさまは仰いました、「娘よ、あなたの信仰が、あなたを救った」。

この間も、会堂長であるヤイロは、一人娘の危篤状態が気がかりで、居ても立ってもいられないような心境であったことでしょう。然し、イエスさまによる長血の女性の癒やしの奇跡、ヤイロには、イエスさまの

「あなたの信仰が、あなたを救った」というお言葉が、強く、耳に残っていたものとおもわれます。

まさにその時、ヤイロの家の使いの者が来て、ヤイロに告げました、「お嬢さんは亡くなりました。この上、先生を煩わすことはありません」。ヤイロの心は一時、絶望の思いに支配されました。もう手遅れか、と恐怖に怯えたのであります。先ほど、イエスさまから12年間もの出血の病を癒やされた女性が、一瞬、名乗り出るのを恐れたように、ヤイロの心も、恐れに支配されたのでした。その前途が真っ暗なヤイロの耳に、力強いイエスさまの御声が響きました、「恐れることはない。ただ信じなさい、そうすれば娘は救われる」。イエスさまはヤイロの家に着くと、ペトロ、ヨハネ、ヤコブの3人と、ヤイロ夫婦の他は誰も家の中に入ることを許されませんでした。死んだ娘の為に泣き悲しむ人々に向かって、イエスさまは言われました、「泣くな、死んだのではない。眠っているのだ」。イエスさまによって、“死”は、“眠り”という過渡的な状態に置かれるようになったのです。イエスさまは、死んで横たわっている娘の手をとって、呼びかけられました、「娘よ、起きなさい」。すると、娘は、その霊が戻って、直ぐに起き上がった、と記されています。

この会堂長ヤイロの一人娘が救われたのは何故だったのでしょうか。ヤイロは、家の使いの者から、「お嬢さんは亡くなりました」と告げられた時、まさに恐れに取り憑かれたのです。然し、イエスさまの御声で我に返りました。「恐れることはない。ただ信じなさい。そうすれば娘は救われる」。そしてヤイロの家に着くと。

「もう死んでいるのに、・・・」と嘲笑う人々の声を無視して、イエスさまに従って、死んだ娘が横たわる家の中へ入ったのでした。長血を癒やされた女も、会堂長ヤイロも、共に一瞬の恐れに取り憑かれましたが、それ以上に、イエスさまに全てをお委ねし、ひれ伏したのです。自分の力に頼ることなく、ただイエスさまにお委ねした者の勝利でした。イエスさまは仰います、「あなたの信仰が、あなたを救った」。



前のページへ戻る